築50年の平屋6戸を再生。宮代町生まれの中村3兄妹が手がけるセレクト横丁「ROCCO」

リノベーション費用は15年かけて回収する計画

──不動産を活用して事業を行うのは初めてですか?

英基:3人とも初めてです。でも、ROCCOを始める少し前、弊社に金融関係出身の社員が入社しまして。彼は住宅ローンを担当していたので不動産活用に詳しく、不動産売買に伴う書類作成や大家さんとの交渉を担ってくれました。

──リノベーション費用はどの程度かかりましたか?

英基:最初は昭和の雰囲気を残し最小限の改修をしようと考えていたのですが、いざ中を見たら雨漏りもするし断熱性もまったくなくて。後からちょこちょこと直すくらいならいま一気にやってしまおうと、既存の躯体を残しながら補強や耐震・断熱改修を行い、外部や店内トイレなどのオーナー工事だけで1戸あたり約500万円かかりました。駐車場の整備、6戸をつなぐウッドデッキの施工、サイン看板の制作、あずまやへのヒーターやミストの設置など、そのほかにもさまざまな費用がかかっています。ただ、設計・デザイン・施工と兄妹それぞれの得意なことを活かせたので、通常よりもかなり安く抑えられました。

和基:内装工事費用は各テナントさんに負担していただきました。お店によりますが、それぞれ300~400万円ほどかかっているのではないかと思います。

上は「M yogurt」、下は「サカヤ×ビストロ FusaFusa」の店内。店によって雰囲気はがらりと変わる

──補助金などは利用しましたか?

英基:いえ、利用していません。各テナントが使えそうな補助金はありましたが、私たちのような大家が申請できる補助金は見当たらなくて。もっと探せばあったのかもしれませんが、申請に時間を取られるよりはオープンまでのスピード感を優先した方がいいと思いました。

──投資回収の計画は?

英基:当初は10年で回収できればと考えていましたが、工事費が増えたため15年かかる計算です。1戸あたりの家賃は共益費含めて5万円。坪単価5千円の計算ですね。相場より安いと思います。シェアキッチン棟とあずまやは時間貸しなので、ここの利用頻度が上がれば早く回収できる見込みです。

あずまやは食器の販売やハンドエステなどさまざまなイベントに使われている

──外観は白で統一していますね。

幸絵:ROCCOをわかりやすく、象徴的にしたかったので、白と木製建具で統一しようと決めました。白を選んだのは、宮代町の広い青空に映える、ということと、各店舗の個性があるので、外観では主張しない方がいいと思ったから。各テナントさんには説明会のときに伝え、納得した上で入っていただきました。その代わり、窓や扉のデザインなどほかの部分は自由にして、それぞれの個性を出してもらいました。

各戸の間には日本工業大学の学生が提案したアートも設置されている。日本工業大学とは宮代町のわくわくロード事業の参加がきっかけで、このプロジェクトにも協力してもらうようになった

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