築50年の平屋6戸を再生。宮代町生まれの中村3兄妹が手がけるセレクト横丁「ROCCO」

地域の魅力をより高めたい

──2022年10月のオープンから1年が経ちましたね。日々の運営はどのように行なっていますか?

英基:弊社の社員がROCCOの事務局としてシェアキッチンとあずまや、キッチンカーの予約管理を担っています。instagramの投稿は幸絵の担当。テナントのみなさんとは月1回、定例会議と清掃の時間を設けています。また、くじを引くと景品が当たる「ROCCOくじ」や夜イベントの「ROCCO Night」など、全体イベントも何度か開催しました。

──ROCCOをつくったことで、地域との関係に変化はありましたか?

英基:宮代町に引っ越してきて、まちを盛り上げようとさまざまな活動をしてくださっている方々と知り合うことができました。僕らよりもよっぽど宮代町のことに詳しくて、すごいなと思っています。

和基:象設計集団が設計したコミュニティセンター・進修館と笠原小学校、直売所の「新しい村」、東武動物公園、日本工業大学。小さな町ですが、魅力ある場所、人が集まる場所がたくさんあって、それが「何か始めたい」人に適しているんだろうと思います。最近では、お祭りやイベントに行くと知り合いばかりになってきました。

幸絵:地元の人も外から来た人を柔軟に受け入れるし、みんな優しくて仲がいいんです。宮代町を出てだいぶ経ちますが、この町のそういういいところに改めて気づきました。

──ROCCOができたことで、地域には何か変化が生まれましたか?

英基:ROCCOとして生まれ変わる前、この平屋群付近はさびしく、夜は暗くて近寄りがたい雰囲気でした。昨今、地元の方からは「人通りが生まれ、明るくなってよかった」と言われています。いまでは近隣の幼稚園のお散歩コースにもなっているほどです。また、今年5月にはROCCOの裏にお惣菜屋さんがオープンしました。新しい村にお弁当を卸している人気店で、やっぱり空き家を活用したそうです。

和基:私たちもさらにROCCO裏の空き家を一軒買い取りました。いま整備をしているところで、夜営業してくれるお店を募集する予定です。ROCCOでは「サカヤ×ビストロ FusaFusa」しか夜営業をしていないので、“ROCCO=昼”というイメージが強いようなんです。夜営業しているお店が2店舗揃えば、夜も賑やかになるのではと考えています。

英基:宮代町には現在、80軒ほど空き家があると聞いています。町役場が把握していないものも含めたら、もっとあるかもしれません。空き家の利活用は難しい問題ですが、ROCCOがきっかけとなり地域に賑わいが生まれるような、空き家の利活用が進めば、それぞれの地域の魅力が高まっていくのではないでしょうか。

シンプルなデザインの看板と店舗のマップも印象的

(撮影:木村輝 文:飛田恵美子)

中村英基氏
中村建設株式会社 代表取締役。
中村家の長男。他の建設会社勤務を経て、2001年に中村建設に入社。父に代わり2017年から代表を務める。宮代町在住。

中村和基氏
LEVEL Architects共同代表。
中村家の次男。納谷建築設計事務所を経て、2004年に建築設計事務所LEVEL Architectsを共同設立。長年東京で暮らしていたが、2021年に宮代町へUターン。

中村幸絵氏
グラフィックデザイナー。
中村家の長女。タナカノリユキアクティビティを経て2005年に独立。グラフィックデザインの側面から広告やブランド構築に携わる。東京在住。

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